刺繍は最初の先生で大きく変わります。

刺繍を始めたときに、最初に基礎を教わる先生が私で良かった。

そう感じていただけるよう、一針一針を大切にお伝えしています。

それが、私が一番力を入れ、得意としているレッスンです。

先日、同じ協会の先生とお話しする機会がありました。

私が
「私の教室では、ほとんどの生徒さまが刺繍未経験からスタートし、初級課題、中級課題、上級課題へと順番に進まれています。」
とお話しすると、

「それなら簡単でいいわね。」
「初級ばかりなら、指導も楽でしょう。」

というような言葉をいただきました。

もちろんその先生は、
自由作品を指導するよりも初級課題を教える方が難しくないだろう、
という意味でおっしゃったのだと思います。

確かに自由作品の指導には、
その作品ごとに必要な技術や構成を考えながら進める難しさがあります。

それは長年経験を積まれた先生だからこそできる大切な指導です。

一方で、
私の教室は少し違います。

私の教室に来られる方のほとんどは、「刺繍はまったく初めてです」という初心者の方です。

初級課題から始まり、中級、上級へと少しずつステップアップしていかれます。

つまり私は、
「できる方を教える」のではなく「何もわからないところから育てる」レッスンをしています。

だから私にとって、初級課題の指導は決して簡単なものではありません。

レッスンの中で一番力を入れ、一番時間をかけている部分です。

刺繍は最初に身についた癖が、その後何十年も残ります。

糸を引く力加減。

ステッチの角度。

布を縮ませない刺し方。

裏の糸の渡し方。

こうした基礎は、一度癖になってしまうと後から直すことは簡単ではありません。

私は20年、30年と刺繍を続けてこられた方の作品を拝見する機会があります。

その中には、
「もし最初の段階で基礎をもっと丁寧に学ぶ機会があったなら、さらに美しい作品になっていただろう」と感じることもあります。

最近は刺繍ブームもあり、
本や動画、SNSなどをきっかけに刺繍を始められる方も増えました。

けれど初心者の方にとって
「美しく刺せている状態」を見極めることは簡単ではありません。

作品写真では素敵に見えても、
布が縮んでいたり糸が引きつれていたりすることがあります。

経験が少ないうちは、それが改善できることだと気づくことさえ難しいものです。

だから私は作品を完成させることだけではなく、
美しく刺すための基礎を丁寧にお伝えしたいと思っています。

私が大切にしていることは、技術だけではありません。
生徒さまの多くは、
お仕事や家事、子育てなど、それぞれ忙しい毎日の中で時間を作りながら刺繍を楽しまれています。

生徒さまの練習布

だから「毎日何時間も刺してください」というようなレッスンでは長く続けることは難しいでしょう。

教室では、日常生活の中にどう刺繍を取り入れるか、
生徒さま同士で工夫を共有したり、励まし合ったりしながら、それぞれのペースで取り組んでいただいています。

刺繍は競争ではありません。

忙しい毎日の中でも、一針一針積み重ねた時間は、必ず技術になっていきます。

教室に通われて3年以上になる生徒さまは、難易度の高い作品にも取り組まれています。

そして多くの生徒さまが布を縮ませることなく、美しく作品を仕上げられるようになっています。

上級課題に取り組まれている生徒さま
初級課題に取り組まれている生徒さま

その姿を見るたびに、「最初の基礎を大切にしてきて良かった」と心から感じます。

もちろん刺繍の楽しみ方は人それぞれです。

「好きな作品を楽しく刺せれば十分。」

「少し刺繍ができるようになれば満足。」

そう考える方もたくさんいらっしゃると思います。

その考え方を否定するつもりはありません。

教室には、それぞれの良さがあり、それぞれの指導があります。

私は、初心者の方が安心して最初の一歩を踏み出し、10年後、20年後、30年後も美しい刺繍を楽しめる技術を身につけていただける教室でありたいと思っています。

だからこれからも、初心者の生徒さまお一人おひとりと向き合い、一針一針を大切にお伝えしていきます。

最後までお読みくださりありがとうございます♡

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