認知症の予防には、なることの予防と、重度化の予防があります。
以下は高齢者支援に関わる飯野雄治さんにご協力いただき、まとめていただいた内容第二弾です。

健康寿命が伸び悩む中で、平均寿命が延びており、要介護状態になる人やその期間が長くなっている人が増えています。その中でも身体機能が低下するのでなく、認知症になる方が増えています。特に身体機能が低下せず、認知症になる方が増えていると言われています。また、現在の医学等では認知症を「治す(元に戻す)」ことはできないと言われています。
認知症は、物忘れとは異なると言われます。よく例えられるのは、昨晩の夕食のメニューを思い出せないのが物忘れ、夕食を食べたこと自体を忘れてしまうのが認知症といった具合です。この記事を読んでいる方の多くは、認知症ではない方だろうと想像します。そして、認知症の予防に興味があると思います。認知症でない方が、認知症にならないように予防することは重要ですが、認知症になった方が、さらに認知機能が低下しないように工夫することも重要です。認知症になったら治らないからと言って、いっさい、諦めてしまうと、重度化が進んでしまいます。
また、認知症は、ある日、急になるわけではありません。脳の認知機能が徐々に低下していくものであり、その結果、うまく生活できなくなる方と大きくは生活に支障が生じない方がいます。そして、認知機能が低下するプロセスでは、まだ元に戻りうる時期があるともいわれており、その状態を軽度認知機能障害(MCI)と呼びます。MCIのときは、今までいつもできていたことが分からなくなり、本人も周囲の人も異変や不安を感じます。体操教室で、いつも座っていた場所やロッカーが分からなくなった方がいらっしゃり、それでも体操教室に参加し続け、周囲の方が声をかけ続けた結果、一か月後、ふとわれに返ったかのように記憶が戻り、いつものように参加できた方もいました。このように、認知症は治らないといえども、常に予防しようと工夫することは必要です。
認知症の予防方法は、認知機能の状態により異なるかもしれませんが、手指を動かしながら、楽しいことに没頭することは、脳や心の健康によいことは言うまでもありません。刺繍をしたことがある方、刺繍に興味がある方は、ぜひやってみるとよいでしょう。認知機能が低下しても、身体で覚えた記憶は容易に失われません。外出が難しい方であっても、刺繍の経験があれば、針と布を目の前にすると手が動く方もいます。そんな方は、ご自宅へ講師が訪ねて教えてくれる訪問刺繍を利用してみるとよいでしょう。刺繍に没頭した経験がある方ならば、以前のような作品は作れないとしても楽しい時間を過ごせるものです。それは認知症の予防にもなりますし、人生を楽しむことそのものなのではないでしょうか。
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